動物由来のタンパク質を飼料として牛に与えることは一九八八年に禁止され、理論上は、これで流行が止まるはずであった。
実際、BSE症例に急激な低下があったが、それにもかかわらず、のちにBSEを発症した二六、000頭を超える牛がこの飼料禁止令の実施後に生まれていたのである。
このことは、BSEが、牧草地内の牛どうしの間で、あるいは妊娠中にまたは乳を通じて母牛から子牛へ広がった可能性のあることを示唆していた。
幸いにもこれまでのところ、牛どうしの間で自然にBSEが広がったことを示す証拠はない。
禁止令以後に発生したBSE感染の大部分は農場主側に責任のあったことがいまでは明らかである。
おそらく、彼らはブタとニワトリの飼料として当時まだ入手可能であった汚染された動物性飼料を牛に使用し続けたのであろう。
この段階で誰もが口にした疑問があった。
BSEは人間に感染しないのか?それは遠い可能性としか思えなかった。
なぜなら、何世紀もの間私たちは羊のスクレイピーとともに生活してきたし、何の問題もなく羊の肉や臓物を消費してきたからである。
他方、もしBSEが牛の飼料中のスクレイピー病原体によって引き起こされたのならば、BSEは、羊と牛の間の種の壁をのり超えることに成功したことになる。
それならどうして牛から人へもう一回ジャンプしないということが言えるか?大事をとって、一九八九年にイギリス政府は「特定臓物禁止令」を導入した。
これは潜在的に感染性のある臓物(脳、脊髄、胸腺、偏桃、腸、牌臓)を人間の食物連鎖から取り除くことを目的にしていた。
しかし不幸なことに、牛飼料禁止令と同じように、この法律は厳格に実施されなかった。
この一九八九年の禁止令以前には、約八000のBSEの発症があったし、さらに多くの乳牛が症状なしに病気を潜伏させていたはずである。
これらの乳牛のすべてが人間の食物連鎖のなかに入り込んでおり、したがって、イギリス人たちは一九八九年以前の数年間、食事のたびにBSE病原体にさらされていたのである。
この禁止令のあと、牛肉は確かに一九八0年代初期以来どの時期よりも安全になっていたが、これにもかかわらず、なおも汚染された牛肉が夕食の食卓に上がっていた。
一九九五年にEU(欧州連合)は、イギリス産の牛肉の海外販売を禁止することによって酪農家の多くを廃業に追い込んだ。
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